Vada antiques(東京都武蔵野市)
昔ながらの集合住宅の階段を降り、地下の扉を開けると、ヨーロッパやアジアの国々から仕入れたアンティークとともに、現代作家のつくった道具類がさりげなく並ぶ空間が広がる。
店主の和田泰斗さんは、かつて吉祥寺にあった「MIYAKE & Jubilee Market」に6年勤務し、アンティーク家具のリペアと買い付けを担当していた。自分の店を開くために物件を探していたところ、小さな窓から光が差し込むこの地下スペースを見つけた。今年8月のオープンに向けて、壁を白く塗り、付属の小部屋は100年前のアメリカのオーク材で床を高くした。将来は作家の発表の場にしたいと考えている。
現代作家の品々は、北海道のソロソロ窯や、オホーツク海沿岸に生育するバッコヤナギの特注まな板、車の古い板バネを叩いた沖縄の手づくり包丁など、珍しいものばかり。「古いテーブルと椅子に座り、作家の食器でごはんを食べる。旅の途上で素敵なものに巡り会う。それが僕の楽しくて大切な時間。店にもそんな空気が流れてほしい」と和田さん。家具はきちんとリペアして持ち込み修理も受ける。外注すると費用がかさむため、そのぶん安価にできる。
名前の由来は、インド料理店のメニューにあった「Vada」から。ウエイターに尋ねると、ワダと発音し、南インドのドーナツのことだった。「名前が和田ですので、読み方は見たままのヴァダにしました。カレーも好きだし、響きが面白いでしょう(笑)」。テイストの混在が温かい統一感となって伝わる、この店の空気ともぴったり合っている。(文・永峰美佳)