金沢21世紀美術館(石川県金沢市)
昨年、東京・青山の「TOTOギャラリー間」で開催された「中村好文 小屋においでよ!」展。その巡回展が、金沢21世紀美術館で開かれている。
会場となる光庭に、エネルギー自給自足を目指すひとり暮らしのための小屋「Hanem Hut」を展示。間口3m×奥行き4mという小屋の中には、台所もトイレもシャワーもあり、暮らすのに十分な機能が備わっている。小屋の作りは、杉の三層パネルを床、壁、屋根に利用したプレファブ建築。素人でも器用な人なら容易に組み立て、分解、解体ができるという。
このためにデザインされた家具の使い方や、雨水の利用、風力発電などの仕組みからは、人も小屋も働く暮らしが見えてくる。今展では、東京展にはなかったポンプ小屋が加わった。その中には、雨水をくみあげるためのポンプや、大工道具や農作業道具、風力と太陽光で発電した電気を蓄電するためのバッテリーなどが設置されている。水道や電線といったライフラインにつながらない暮らしが、より現実的に感じられるようになった。
あらたに会場構成された、長期インスタレーションルームでは、中村さんが思いを寄せる「古今東西の七つの小屋」をはじめ、Hanem Hut設計図面一式、自身が手がけた「小屋」と「小屋的な建築」、映像コーナーでは、小屋ができるまでの延べ4日間の記録映像などが見られる。これら小屋の実例を通して、住宅のあり方を、じっくりと考えられる展示となっている。(文/雨宮ゆか)