246COMMON(東京都港区)
東京・表参道駅から青山通り(国道246号)を外苑前方面に進むと、すぐ右手に個性的な小屋やトレーラーが寄り集まった、賑やかな一画が現れる。外壁を無数の枝で覆った小屋、板やトタン板を張り合わせた小屋など、これらの正体は実は小さな店舗。
250坪に及ぶこの一画は、カフェ・カンパニーが事業主体を務める「246COMMON」だ。UR都市機構が所有する土地だが、遊休地となっていたため、昨年8月から1年7ヵ月の期間限定で、新しいスタイルの商業施設がつくられた。
「モデルとしたのは昔ながらの商店街。今はシャッター街が増え、急速に商店街が失われつつあるけれど、街づくりにおいて、人と人がつながることは大事。青山にはいろいろな人々が行き交っているけれど、彼らが集える場所がない。ここは緩い横のつながりをつくるための場所。出店者もお客様もそうしたコミュニティを楽しんでほしい」とカフェ・カンパニーの伊原志津子さんは話す。
小屋やトレーラーにはすべて車輪が付いており、いつでも移動が可能。季節や出店者の入れ替わりに合わせて、敷地内でレイアウトを変えている。小屋やトレーラーはカフェ・カンパニーの所有で、比較的安い家賃で借りることができるため、出店者の中には20代の若者の姿も。「できるだけハードルを下げて、若者がチャレンジしやすい場所にしたい」という同社の思いを反映している。
とはいえ、ここは都内の一等地。「場所柄、お客様のレベルは高いので、クオリティの高い商品やサービスが求められます。ここで商売のノウハウを身につけて、次へのステップにつなげてほしい」と伊原さんは話す。
出店者数は20数店舗。協力団体の1つである「青山ファーマーズマーケット」から出店した青果店や農家直送の野菜料理店をはじめ、ベーカリー、カフェ、パブ、獣肉料理店、さらに眼鏡店、キセル専門店とバラエティに富んでいる。
敷地内には共有のテーブルがいくつも設置されていて、客は購入した料理や飲物を自分で持ち運んで、自由に利用することができる。ランチや喫茶、打ち合わせ、仕事帰りの一杯、犬の散歩途中の立ち寄りと、客の利用の仕方はさまざま。暑い季節はビアホールのような雰囲気になるという。
オープンから半年経ち、まるで長屋のようなつながりができた出店者同士は、隣の店舗の商品を客に勧めることもたびたび。言わば「場所も客もシェアしあう」というのが、ここの流儀なのだ。
お祭りの屋台をのぞくような感覚で、青山通りを通り行く人々は足を止める。青空の下、都会で奇跡のようなコミュニティが生まれている。