Gallery SU(ギャラリー エス・ユー)(東京都港区)
大きさの揃ったそのカードの絵柄は、人、動物、植物、風景、幾何学的なかたち、独創的な模様など、色彩もさまざまだ。フランスの画家、ロベール・クートラスが毎晩描き続けたという「カルト」。テクスチャーのある手札大のカードは、板切れか、あるいは金属に描いているようにも見える。
「これらの作品は靴箱などの厚紙や、拾ってきたボール紙などを切って、油絵で描いています。何度も塗り重ねて、わざと床に擦ったりすることもあったようです」。
六本木の路地裏に残る昭和11年に建てられた集合住宅「和朗フラット四号館」の一室。山内彩子さんは自宅だったこの場所にギャラリーを開いた。現代作家の作品も扱うが、室内に置かれた棚や壁にはクートラスの作品を中心に飾っている。
棚にはカルトだけでなく、ユーモラスな表情をした人の顔のテラコッタも一緒に並ぶ。
「近所の工事現場の土を掘って、自室のダルマストーブで焼いたそうです。クートラスは、画廊との契約を断ってからは、画材を買うお金もなかったので、身近にあった素材を使っているんです」。
小さな室内にはベンチがあり、これらの作品をゆっくり愉しむことができる。ギャラリーの名前、「SU(エス・ユー)」は、「巣」に由来する。
「この建物は長い間、いろいろな人に大事にされてきました。そんな場所で、人の手から手へ渡っても、ずっと愛されるものを扱っていきたい。訪れる方がほっとできる"巣"のような場所になるといいです」。
(2011年冬号)