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薪窯で焼くパンと、器の店を訪ねて

「ユッカ屋」(東京都日野市)

vol.35 薪窯で焼くパンと、器の店を訪ねて

 多摩丘陵の一角、樹林が多く残る日野市百草。目の前に、ブルーベリー畑が広がるバス通り沿いにこぢんまりとした店が開店した。粕谷修朗さんと奈津子さんの住まいに併設するパンと器の店「ユッカ屋」だ。

 4時起床。パン焼き窯に薪を入れ、温まるまで5時間。9時から焼き始め、昼までにすべて焼き終える。パンをつくるのは奈津子さん。

「生地は20時間前後低温発酵させるので、午後からは生地づくりです」。自家製の酵母のほか、バゲットと食パンにはごく微量のイーストを使う。発酵に時間をかけることで、粉の味を引き出すことができるという。

「近所の農園の卵やブルーベリーも使い、できるだけ国産の材料で、オーガニックのものを選んでいます」。

 奈津子さんがつくるパンは、皮は硬いが中はしっとりとして、かむほどに口にふんわり溶けていく。大谷石の上に骨董の棚を組み合わせてつくったショーケースには、15種類前後の美味しそうなパンが並ぶ。

 窓際の棚には、湯のみや飯碗、鉢など、手で包み込みたくなるような柔らかなかたちの器。これらは修朗さんの作品だ。

「粉引を中心に、日常使いの器をつくっています。素朴なかたちの中に、微妙な手の動きを残したいと思っています」。

 6年間、ふたりは沖縄の読谷村で暮らしていた。奈津子さんはパン屋を開き、修朗さんは独得な絵付けで知られる読谷焼きの工房で修業。  

「沖縄で、このマカイという茶碗に出会いました(写真左下)。高台が高く、腰がたっぷりとしていて、口がすこし反ってシャープ。ものとしてのバランスがいいんです」。

 沖縄では汁物がよく食べられるので、おおぶりな5寸が出回っている。  

「飯椀として使うには、4寸がしっくりきます。沖縄では絵付けをしていましたが、いまはこの土地の食べ物に合うように。粉引の白も温かみのある色に仕上げています」。

 パンを焼く妻と器をつくる夫、ふたりの共同作品が店の隣のパン工房にある。工房の中央にある、どーんと存在感たっぷりのパン焼き窯がそれだ。

「作り方をいろいろと調べましたが、なかなか見つからず、想像でつくりました」。

 レンガを積んで、溶岩盤で炉をつくり、塗り固めるために陶土を2トン運んだが、足りなくなって庭の土を混ぜたり......。試行錯誤しながら完成させ、半信半疑で火を入れたところ、パンは見事に焼き上がった。「自分たちでできるものは何でもつくります」とふたりは楽しそうに笑う。

 ふたりがつくるものが並ぶ店、ユッカ屋。「ユッカ」とは、沖縄の方言で「4日」のこと。店は金曜日から月曜日の4日間、開く。

(2010年秋号)

薪窯パンと器 ユッカ屋
□東京都日野市百草736-3
□Tel. 042-511-8482
□営業日/金・土・日・月の週4日
http://yukka-ya.jugem.jp