「ki-to-te」(東京都国分寺市)
国立駅からバスで約10分。ソーイングカフェ「ノルブリンカ」(小誌33号で掲載)の隣、築40年ほどの平屋の一室に「木の道具 ki-to-te」のギャラリーがオープンした。無垢の木でつくる「小物から家具まで、暮らしに使う道具」を取り揃えている。
ここは、木工作家の前田充さんと妻の由美さんの住まいでもある。
「去年の暮れに引っ越してきた時は、床も抜けていて、とても住めるような状態ではありませんでした」。自力で床を張り替え、砂壁には漆喰を塗り重ね、6月初め、ようやくギャラリーのオープンにたどり着いた。
ギャラリーは、玄関から入って正面の部屋。白い壁と柿渋を塗った杉の床。二方の窓からは陽光が入り、庭の緑が気持ちいい。室内のテーブルの上には商品と一緒にパンやジャムも添えられたテーブルセッティング。壁際の棚には大小・樹種さまざまの器やスプーンと一緒にコーヒー豆の入ったビンやマグカップなども置かれている。
「実際に使っている雰囲気を見てもらうと、お客さんも使い方をイメージしやすいので」と"営業担当"の由美さん。
人気のコーヒーメジャーは、珈琲店でも使われている。由美さんがコーヒーを淹れるとき、ふと木の素材のメジャーがあればいいなと思い、それを充さんがかたちにした。
「いつも自分たちで長く使ってみてから人に出すので、家の食器棚は試作品ばかり(笑)。コーヒーメジャーは10回以上つくり替えました」。
一見するだけではわからない使い勝手がそれぞれの商品にはある。例えばジャムスプーンは、ジャムが落ちないようにすくうところをノミで削り、反対側はパンに塗りやすい角度にしている。新作の椅子は、試作を重ねた背と座面の曲線により、長く座っても疲れない。
「使いやすさを一番に考えると自然にシンプルなデザインになり、何の変哲もない道具に見えるかもしれません。長く使ってもらって、いいな、と思ってもらえたらうれしい」とふたりは話す。
使っているのはチェリー、ブラックウォールナット、タモ、ナラなど。「同じ木でも一つひとつ色、木目、質感も違う。実際にさわって選んでほしい。木をさわりに来る気持ちで、気軽に来てください」。
(2010年夏号)